Health Time 6月4日は"ムシバ"の日
「CAD/CAMを用いた新しい歯科治療の流れ」
口腔内に装着する冠、ブリッジ、入れ歯のフレームなどは「人工臓器」
CAD/CAMシステムの導入によるジルコニアなどの新素材に対応した、新しい技術が確立され、歯科技工において、大きな転換期を迎えることになりました。
昨今コンピューター技術の進歩には目を見はるものがあります。
歯科医療界においても、カルテ作成、患者管理、デジタル画像解析による診査・診断など「コンピューター無しの医療行為は考えられない」といった現状になっていると言えましょう。
従来口腔内に装着する冠、ブリッジ、入れ歯のフレームなどは、それら複雑な工程の中で、石膏は膨張する、金属は収縮するなどの変形にいかにして対処し、精度を高めるかは、歯科技工士の経験側と職人芸ともいえる技能に依存することによって適合性や審美性が補われてきました。
確かに器用さを備えた我々日本人の施術する歯科技工は世界をけん引するほどの技量ではありました。
しかしながら、歯科技工物は、患者の口腔内に装着されれば「形態・機能・審美」の用件すべてが満たされた「人工臓器」であり、単なる「飾り物・置物」ではなく、口腔のみにとどまらず、身体の構造にそった、再現性のある医療用具が作製されなければなりません。
そのためには、これまで行われてきた経験と勘に頼る技能だけでなく、データーに基づいた科学的根拠のもとに高品質・高精度の歯科技工物を製作する必要があります。
近年、歯科器材の開発に伴って形成加工法が多岐にわたり、自動車産業などの一般工業界では既に多くの実績のあるコンピューターを用いた加工技術が、歯科技工界にも取り込まれるようになりました。
特に歯科技工におけるCAD/CAMの特徴として、製作物の材質が均一であり、安定した高精密な技工物が作製可能であり、コンピューターによる情報の伝達保存が可能となりました。
さらにCAD/CAMシステムの導入により、患者様、歯科医師、歯科技工士にも多くの利点があります。
患者様サイドにおいては、侵襲の少ない治療。安心・安全な歯科治療術式、適正な治療価格の確立など医療サービスの向上。
歯科医師サイドにおいては、診断能力の向上、患者様とのコミュニケーション、治療にかかわるストレスの解消、などのメリットがあり、歯科技工士サイドにおいては、作業環境、安心・安全な補綴装置※)の設計・製作、生産性、作業時間の短縮など多くのメリットがあります。
本年4月よりCAD/CAMを用いた歯冠修復が小臼歯に限り保険適用となりましたが、現在のところ、残念ながら、使用できる材料・機材に制限があり、従来から自費診療で用いられていた材質のものと比べると安価ではありますが、性能が劣り、ジルコニアなどのマテリアルの1/5程度の強度しか得られず、よって破折・咬耗などの問題が山積する可能性があると考えられます。
ただ白い歯ということで安易に使用することは、現在のところ慎重に状況を見定めたほうが良いと考えております。
歯科医療は、顎口腔系機能である、呼吸、咀嚼、嚥下、発音、コミュニケーションなどの健全な保持、増進回復を担う重要な役割を持った、日常生活を支えるとともに生命に直結した医療であります。
健康な長寿を過ごすためには失われた歯列、咬合を保持するために、より良い補綴装置※)が重要な働きをしていることを認識され、おいしい食生活を送られるとともに、健康な毎日をお過ごしください。
※)口腔内に装着する冠やブリッジ、義歯、インプラント上部構造など